スペインで、兄の友人にドライブに連れて行ってもらったことがあります。
その車はマニュアル車で、手動で窓を開け閉めする、しかも右(左?)後ろの窓はある高さまでしか上がりません。
日本ならまず車検は通りませんが、スペインに車検はないのか、市内でも似たような車を多く見かけました。
あまり静かとはいえないエンジン音で走り出した車でしたが、そこから見えた風景は今でも忘れられません。
クリムトの接吻を想わせる官能的な風景が続き、半開きの窓から吹き込む風がしきりに私の頬を撫でました。
それまではドライブの良さがわからなかった私ですが、あれは知的な(かつ文化的な)趣味であるということはすぐにわかりました。
そして、私が車にこだわり過ぎていたということもわかりました。
道が美しければ、車はボロでもいいのです。
人生も、同じなのではないでしょうか。