寿司屋の思い出

昔は寿司屋に行ってわさび抜きを頼んでも、少しはわさびが付いていたものです。

職人さんが握るわけですから、綺麗に手を洗ったつもりでも、どうしても風味が残ってしまうものですし、ときおり「忙しいから」といった理由で手を洗わずに握っている職人さんもいました。

昔のわたくしは寿司は好きでもわさびが大の苦手でしたから、それにいつも苦心しておりました。今となってはいい思い出です。

そんなことも最近はなくなりました。「わさび抜き」とタッチパネルで押せば、きちんとわさびが入っていないお寿司が届きますし、仮にわさびが入っていても店員さんに言えばすぐに取り換えてくれます。

昔の寿司屋というのは、少し注文が間違っていても、それを指摘するのは憚られる雰囲気でした(わたくしが小さかったからかもしれませんが)

よく言えばお店が優しくなった。悪く言えばお店の味がなくなった。

そんな気がいたします。

今、わたくしが通っていたころの寿司屋がどこかにできたとしても、クレームが多すぎてすぐに閉店してしまうでしょう。

なんというか、いろいろと昔のお店でしたから。

ですが、それでよいのだろうかとふと思うのです。

さらに「お客様は神様だ」という雰囲気が加速し、モンスタークレーマーという言葉も出現したくらいですから、少しくらい店に権力を持たせたほうが、健全な気がしてなりません。

昭和は遠くなりにけり。

昔を美化するのは、よろしくないことのほうが多いのですが、それでも、今はなんだか、生きづらい世の中でございます。

これが、岡田斗司夫さんのいうところの「ホワイト化」なのでしょうか。