指導

わたくしは、職場で指導する機会が多いのですが、手取り足取り教えることはありません。

教育の現場なら、そうしたかもしれませんが、職場の新人さんに同じようなことをしても意味がないと思っているからです。

教育は、お金を払いサービスを受ける側です。

ですので、基本的にお客様ですし、受け身のなることが多いのです。

しかし、仕事は違います。

基本的に、お金をもらいサービスを提供する側で、能動的に行動しなくてはなりません。

また、教育はお金を払えば誰でも受けることは可能なので、やる気のない人の割合が多いのですが、仕事は面接や書類選考などである程度やる気のない人ははじかれ、程度に差はあれ、仕事をする人は基本的にやる気があります。

やる気があり、サービスを受ける側ではなく、提供する側、というところが教育と、職場の根本的な違いです。

そのため、指導の方法も違ってきます。

動機づけ面接ではありませんが、わたくしから「こうしなさい」と言ったところで、そういわれた新人さんはたいして成長しません。

大事なのは、新人さんに「もっとこういう風にしたいのですが、どうすればいいですか」という言葉を引き出すことです。

この言葉を引き出すことができれば、あとは自然とその新人さんが自分で成長してくれて、仕事を覚え、戦力になります。

ですが、職場での新人指導は「こうしなさい」「ああしなさい」と言うことが多いようです。

なぜこうなるのかはわたくしにはよくわかりませんが、似たようなのに「最近の若者はなっていない」というものがあります。

これはある種の逃げで、わたくしはよく思うのですが、もし最近の若者が「もっとよくなりたいのですが、どうすればいいですか」と訊いた時に「最近の若者は~」といっている人は、答えることができるのでしょうか。

「最近の若者は~」という言葉はそれを改善する方法がない場合に出てくる言葉であり、もし最近の若者を改善する方法を知っているなら、直ちに行動に移して、事態を打開しているはずです。

自分が行動できない、改善案がないのをカムフラージュするために、この言葉が出てきている、とわたくしは勝手に思っております。

つまり「こうしなさい」「ああしなさい」と言うことで、実のところそのことをよりよくする方法を自分が知らないことを、悟られないように逃げているのです。

これはあくまでわたくしの仮説なので、間違っているかもしれませんが。

ともあれ、わたくしは職場での指導は基本行っていません。

それよりも、指導しなくてはならない新人さんのやる気を、いかに引き出すか、に集中しています。

新人さんがやる気になれば、あとは雪だるま式に成長して、わたくしがとても楽をできるからです。

押してダメなら引いてみろ、ではありませんが、いろいろ指導することばかりに気を取られて、新人さんの「もっとやりたい」「もっと上手くなりたい」という気持ちを、ないがしろにしている気がしてならないのです。

「こうしなさい」「ああしなさい」というのは簡単です。

それを言えば、なんとなく教えている気がしますし、瞬間的に見れば、新人さんもその通りに動いてくれるでしょう。

ですが、それは長続きしないものです。

着眼大局、着手小局。

すぐに手っ取り早く覚えてほしい、という気持ちもわかりますが、俯瞰して見れば、新人さんのやる気を引き出し、その人の向上心に訴えかけるほうが、誰にとっても良い結果を生むのだと思っています。